2023/08/31

横浜発祥のカクテル「ジャック ター」のヒストリーと語源の由来

今年の横濱インターナショナル カクテル コンペティション クリエイティブ部門の課題カクテルは、横浜中華街ウィンドジャマーの初代オーナーJimmy Stockwell (ジミー ストックウェル)氏が、1972年に考案したとされる「Jack Tar(ジャック ター)」です。



考案者のジミー氏はアメリカ人で、学生時代に父親が経営していたニューヨークのパブでお手伝いをしていたといいます。

1960年に軍に入隊し、厚木基地に配属となる。

1960年代後半に戦争中のベトナムへ赴き、72年に横浜へ戻ることに。

軍人時代は、親戚が経営していた本牧のイタリア・ガーデン(現在のIG)」でアルバイトをし、除隊後の72年にもイタリアン・ガーデンで働いていました。

ジミー氏は、イタリアン・ガーデンの2代目オーナー ハリー・コーベット氏(1958年〜1965年)の時代にマネージャーを務めていた経験もあります。

IGのシグネチャー・カクテルに「Siberian Tool Kit(シベリアン ツール キット)」があります。

これはジミー氏がIGのマネージャー時代の1960年代に考案されたと思われるカクテルで、 "Limit  is Thee"と注意書があり、3杯までしか飲めないルールとなっています。

レシピは、カナディアンクラブ、ウォッカ、カルーア、バニラアイス、クリームのアルコール強めの甘いロングドリンクです。

1972年9月1日、横浜中華街に「ウィンドジャマー」をオープン。

開店当時からオリジナルカクテル「ジャック ター」もあったようですが、レシピは開業する前には決まっていたようで、イタリアガーデン時代に創作した可能性もありますが、ジャック ターのレシピは残されていなかったようです。

初期のジャック ターには、4つの材料で作られていました。

ロンリコ151ラム、サザンコンフォート(当時はアルコール43%)、ライム・コーディアルにクリーミーヘッドが加えられていました。

クリーミーヘッドは、泡立ちをよくするためのフォーム材です。

4つの材料をティンに注ぎ、スピンドルミキサーで撹拌し、クラッシュドアイスを詰めたロックグラスに注ぎ、カット ライム、シップスティック ストローを飾ったもの。



かなりパンチのあるロングドリンクで、シベリアン ツール キットに続く、ストロング カクテルでした。

アルコール度数が高いため、クリーミーヘッドのフォームが直ぐに消えてしまうことから、クリーミーヘッド無しとなり、現在の3つの材料で作るレシピに定着しました。

カクテルの「JACK TAR」は、JACKが "海兵隊" の意味で、TARが "タール油" で「タールの海兵隊」である。

この言葉はもともと商船海軍またはイギリス海軍、とくに大英帝国時代の船員を指すために使用されていた用語で、アメリア海兵隊の愛称でも使われていました。




海兵隊は航海に出発する前に衣服の防水加工を施す為にタール油をかけたり、船の設備に髪が引っかからないように高級タール油を髪に塗り整えていたといいます。

海兵隊はタール油を常用していたことから、いつしかJACK TARの愛称になったと言われます。

そうすると本来カタカナで、このカクテル名は「ジャック タール」と書くべきだったかもしれませんが、ジミー氏は英語の発音的に、タールをターにしてジャック ターと読ませたと思われます。

今年の横濱インターナショナル カクテル コンペティション クリエイティブ部門のファイナリスト6名のジャック ターのツイストカクテルの発表が楽しみですね^ ^