横浜・本牧で誕生したカクテル【Siberian Tool Kit(シベリアン・ツール・キット)】のお話し。
シベリアン・ツール・キットは、1962年にJimmy Stockwell (ジミー ストックウェル)氏が、本牧のイタリアン・ガーデン(現在のIG)で考案したカクテル。
ジミー氏は、1960年に軍に入隊し、厚木基地に配属となる。軍人時代は親戚が経営していた本牧のイタリア・ガーデン(現在のIG)でアルバイトをしていました。イタリアン・ガーデンの2代目オーナーであるハリー・コーベット氏(1958年〜1965年)の時代にジミー氏はマネージャーを務めていた経験もあります。
1960年代後半に戦争中のベトナムへ赴き、72年に横浜へ戻り、横浜中華街にWindjammer(ウインドジャマー)を開店させる。
イタリアン・ガーデンが、現在のIGに名前を変更したのは1997年で、その35年前にカクテルは創作されている。IGになってから壁に貼られた以前のメニュー下に「35年前にジミーさんが作ったオリジナル」と書かれている。
アルコールがしっかり入ったキラー・カクテルなのでジミー氏が ”Limit is Three”(1人3杯まで)しか飲んではいけないと決めたそうです。
私は、このカクテルのルーツはカナダのエッグノグと呼ばれた「Moose Milk (ムース・ミルク)」にあると考えています。
ムース・ミルクは、1940年代にカナダの軍人の間で新年を祝うドリンクとして人気で、祝祭日や軍の集まりで提供される 。1915年から1920年あたりにカナダ空軍が考案したカクテルと言われています。
カクテル名は、カナダのJack Pony Moore空軍曹の名からとされます。
別名「High-Propulsion Eggnog(ハイプロペレーション・エッグノッグ)」とも呼ばれていました。
レシピは、カナディアンウイスキー、ラム、カルーア、メープルシロップ、卵黄、ミルク、クリームのようです。ラムの変わりにウォッカを使うレシピもあります。
卵黄とミルク、クリームを簡易にしてバニラアイスを使う例もあるようです。
シベリアン・ツール・キットのレシピは、ウォッカ、カナディアン・クラブ、カルーア、バニラアイス、クリームで作られ、ほぼムース・ミルクなレシピです。
かつてウインドジャマーの姉妹店であった横浜中華街の「ケーブルカー」では、今現在もメニューに掲載されているカクテルですが、レシピは、ウォッカ30ml、ライ・ウイスキー15ml、カカオ・リキュール15ml、ミルク30mlのショート・カクテルです。
考案当時のレシピと異なり、簡易にアレンジされているようでした。
横浜で提供しているバーは少ないですが、63年間いまだに引き継がれているカクテルなので大切にしたいですね。