横浜グランドホテルの支配人として招聘されたドイツ系アメリカ人でサンフランシスコ出身のLouis Eppinger(ルイス・エッピンガー)氏。
1889年に来日とされておりますが、自分の調べでは未だ確証が持てておりません。
1890年5月に横浜グランドホテルは新館開業を予定し、エッピンガー氏が支配人に就任するのも1891年1月であったことから、1890年にサンフランシスコより招聘された可能性もあると考えています。
だとするとBamboo Cocktail(バンブー)は、早くても1891年に横浜グランドホテルでサーブされ始めたのではと思われます。
2017年秋に掴んだ情報ですが、横浜生まれとされているバンブー・カクテルは、ルイス氏が横浜に来られる前の1886年に、ニューヨークで流行している様子が記事になっておりました。
1886年9月11日、カンザス 州の「 Western Kansas world., September 11」の記事に以下が掲載。
記事の内容は以下です。
A new and insidious drink has been introduced by some Englishman, and is becoming popular in New York barrooms.
It consists of three parts sherry and one part vermouth, and is called "bamboo".
また続いて
1886年9月19日の「St. Paul daily globe., September 19」の記事にも掲載。
One of the latest and most insidious drinks was recently introduced into swell saloons in this city by an Englishman.
Consists of three parts sherry and one part vermouth.
It is called "Bamboo," probably because after imbibing the drinker feels like "raising Cain".
1889年7月28日の 「Pittsburg Dispatch, July 28」ではバンブー・カクテルにとても似た【Marine Cocktail】も登場しており以下の様に掲載。
Lots of men come in here and call for a
„marine cocktail,“ an odd fancy of mine,
composed of sherry, vermouth and orange
bitter, with a spoonful of shaved ice.
1880年代後半のアメリカではシェリーとベルモットの組み合わせのカクテルがいくつか存在し流行していたと思われます。
またホフマンハウス・ニューヨークのチャーリー・マホニー氏が考案したということ説もあります。
1886年頃ですとチャーリー・マホニー氏が若い頃ですので考案したとは考えにくいです。
ニューヨークで飲まれていた当時はスイート・ベルモットを使うバンブーだったようで、エッピンガー氏が横浜でサーブしたものはドライ・ベルモットにアレンジしたものともされております。
現在日本で広く飲まれているバンブーは、エッピンガー氏のスタイルで、そういう意味ではバンブーはエッピンガー氏考案かもしれません。
横浜のグランドホテルで腕を磨き、エッピンガール氏と当時共に働いていた浜田昌吾氏の著書「すぐにできるカクテル505種」には、バンブーのレシピが4つ紹介されています。
浜田昌吾氏が紹介しているバンブーは以下です。
バンブー・カクテル①
ドライシェリー 1oz、フレンチベルモット 1/3oz、イタリアンベルモット 1/3oz
ステアしてカクテルグラス
バンブー・カクテル②
ドライシェリー 1oz、イタリアンベルモット 1oz
ステアしてカクテルグラス
バンブー・カクテル③
ドライシェリー 1oz、フレンチベルモット 1/2oz、アンゴスチュラビターズ 2滴、オレンジビターズ2滴
ステアしてカクテルグラスに注ぎ、オリーブを飾る。
バンブー・カクテル④
ドライシェリー 11/2oz、フレンチベルモット 11/2oz、アンゴスチュラビターズ 2滴(ここに描かれるビターズ瓶がオレンジビターズの絵なのでアンゴスチュラビターズではなく、オレンジビターズの可能性もあり)
ステアしてカクテルグラス
現在のバンブーがどれにもあてはまらないですが、④のビターズの表記が誤りであれば、現在日本で一般的なものはこれにあたるのかもしれません。